事例紹介 社会医療法人財団慈泉会 相澤病院

社会医療法人財団慈泉会 相澤病院
品質管理部 藤村七海 様
ePROのご利用目的
23年2月現在、複数の診療科 / 臨床研究で利用中
下図はがん集学治療センターでの取り組み。
がん集学治療センターにて、臨床研究の一環としてePROを導入しています。
病院薬剤部と薬局薬剤師が情報を共有して薬物療法を提供する院内外薬薬連携を行っています。
・条件を満たした場合「特定薬剤指導管理加算2」あり
・「トレーシングレポート」は紙にて運用中
今回、ePROを導入しようとしたきっかけを教えていただけますか?
当院では、患者満足度の向上を目指して様々な取り組みが行われています。
患者満足度を向上させるためには、患者さんが、外来-入院-退院を通じて経験する様々な事柄(患者経験)と、ePRO(電子的患者報告アウトカム)の2つを向上させる必要があります。
ePROの役割は、医療者からだけでなく、患者さんからも「治療成績」について評価をしていただく場を設けて、向上させるべき点を明確にすることです。
治療成績とは、治療した症例の数、手術の件数などを示す「治療実績」とは違い、治療の結果症状が良くなったかどうかを表す指標です。医療者・患者双方の評価を『見える化』して共有することによるチーム医療の推進、医薬品や検査によって健康被害や悪化が起きてしまう「有害事象」の早期把握など、様々な効果が期待できます。
それらを通して患者満足度向上、ひいては「医療・サービスの質向上」に繋げるために、ePROが重要な役割を果たすと考えたことがきっかけです。
ePRO導入にあたって不安や疑問などはありましたか?
いくつかありました。まずはコスト面です。ePROは保険適用されていない、つまり国によって「治療としてはっきりと効果がある」と認められているものではないので、民間病院では導入や維持にかかるコストの回収は実質不可能です。これは最初に頭を抱えた大きな問題でした。
次に、対象患者の選定についてです。疾患の種類や年齢、性別などを踏まえた患者さんの特性には十分配慮する必要があり、慎重に進めなくてはいけない部分でした。
さらに、個人情報の取り扱いやセキュリティ面についても不安がありました。患者さんの個人情報の取り扱いは非常にデリケートなものです。情報の運用には細心の注意が必要になるため、セキュリティ面での検証が欠かせません。
患者さんがスマホで情報を入力することについて懸念はありませんでしたか?
高齢の患者さんも多いため、なかったとは言えません。しかし、使用方法をまとめたリーフレットを作り、スタッフがアプリのダウンロードから初回登録までを一緒に行うなど、サポート体制を工夫することで、問題無くご利用いただくことができています。
年齢層の高い患者さんが多い診療科では、継続的にご回答いただけるよう、「見守り機能」の活用も検討しています。
昨今、スマホは年齢や性別に関係なく、非常に多くの方が利用をはじめているデバイスですので、その心配も少なくなっていくと思います。
ePROとして、3Hの「P-Guardian」を選んだ理由を教えてください。
P-Guradanを選んだポイントは複数あります。

【低コスト】
コスト面で不安があったと前述しましたが、サービス内容を考えると最終的に納得がいく金額でした。医師や研究者に特別なIT技術がなくても患者さんへの質問事項を決定し、入力範囲の設定も行えるので、導入にあたって特殊な訓練が不要です。そうした教育に費やすコストを削減できるとも考えました。

【アプリの活用】
スマートフォンでのアプリの使い方はそれほど複雑ではないので、症状の変化を簡単に確認出来ます。また、複数の医療者が同時に確認できるので、効率的に情報共有が行え、チーム医療の推進にも役立つと感じました。

【指標作成の簡易さとカスタマイズ性】
あらかじめ、さまざまな質問形式が用意されているので、一から質問事項を考える必要がなく、選択できるところが非常に便利です。当然、こちらで自由に作成することも可能なので、簡易さとカスタマイズ性のバランスが丁度よいと思います。

【管理者権限の自由度】
病院薬剤師と薬局薬剤師が情報を共有して薬物療法を提供する院内外薬薬連携はもちろん、院内であっても医師・薬剤師・リハセラピスト等さまざまな医療者が関わるため、役割に応じて権限を設定できるのは大変助かります。

【重症度に応じたアラート機能】
患者さんの症状の重症度に応じて、症状アラートの有無を一覧できます。症状悪化の早期把握に繋がるため、導入必須条件のひとつでした。

【豊富な実績】
3H社は、患者向けにがん情報サイト「オンコロ」などの医療メディアを運営してきた経験があり、治験事業における豊富な実績があります。医療情報を取り扱うノウハウを備えているというのが、3H P-Guardian導入の決め手になりました。
ePROを導入したメリットを教えてください。
当院は地域医療の基幹病院として、急性期医療を担当しています。命に関わる疾患を診ることが多いなかで、たとえば心不全や脳出血などの治療を当院で行う場合、もっとも容態の悪い急性期の治療を行った後は、悪化して再入院されるまで、患者さんの状況を知ることができません。
在宅復帰後、生活の場での患者さんの様子を知ることができれば、再増悪前に薬剤の調整や訪問リハビリ導入を行って在宅期間延長に繋げ、患者さんのQOL向上に貢献することができると考えています。
また、患者さん自身やご家族も、手元の携帯アプリで症状の推移を確認することができるので、患者・医療者間のコミュニケーションツールとしての役割も期待できます。
さらに、当院は基幹型臨床研修病院としての側面も持ちますので、ePROを活用することで臨床研究におけるデータ整理の負担を軽減し、より活発で内容の深い学術発表や論文執筆を後押しできればとも考えています。
最後に、今後 3H P-Guardianに期待することがあればお聞かせください。
まずは患者さん目線でより使いやすいアプリとなるよう、現在お持ちの病気だけでなく、将来の疾病予防や健康増進に有意義なアプリとして、アップデートを進めてほしいと考えます。その後、病院目線として「小回りのきくシステム」や「ベンチマークへの取り組み」も行っていただきたいです。

具体的には、当院のような地域医療基幹病院は、幅広い疾患をカバーしている一方で、疾患個々の母数はそれほど大きくありません。
そのため、患者さんの母数がそれほど大きくない疾患でも、登録や記録をもっと柔軟に対応できるシステムが充実すれば、地域医療を担う中小の病院の導入ハードルもグッと下がるのではないでしょうか。
また、3Hさんのシステムを活用している他の医療機関ではどういった取り組みがなされていて、治療成績はどう推移しているかなどのベンチマークを行えるようになると、医療のグローバル化躍進にも繋がっていくのではないかと考えます。